3. 1月12日 万里の長城

 起床は6時、疲れと寝酒のおかげでぐっすりと眠れた。昨日同様、さっさと支度を済ませて食事をする。まだ時間があるのでまた散歩へ行くことにした。今日はホテルのちょっと先にある通りの一角にやけに若い人がたくさんたむろしている。中学校の前だ。行ってみると、入口の所に赤い横断幕が掲げてあった。どうやら高校の入学試験日らしい、道理で...  緊張した面もちで、それぞれに参考書らしき物を持って、最後の追い込みに余談がない。どこの国も試験風景はやっぱりおんなじだ。帰り際にホテルの向かいの小さな店でコーラのペットボトルを一本買う。(3元)明るい内にホテルの前で記念撮影、いかにも中国風の古風な建物だ。

 一行はバスにて一路万里の長城へ向かう。市内は通勤の人たちで、ひしめている。時間はもう8時を回っているが、まだヘッドライトが欲しいくらいに暗い。しかし、ヘッドライトを点けている車はほとんどない、車幅灯がいいところだ。中には全く灯りを点けていない車もあって、ちょっと危なっかしい。バスは高速道路へ、入り、順調に進む。北京からは概ね1時間位かかるそうだ。高速を降りたところでトイレ休憩、(と、言いつつ本当はお土産を買わせるのが目的)

中学校前 

 南菜園ホテル
 

 店内には、たいして欲しい物もないので、駐車場の向こうにある小さな店に行ってみた。店の前にはストーブ用の石炭が無造作に置かれている。窓ガラスには、直接、赤い文字でメニューが書いてある。外から覗いてみるとペットボトル飲料や袋菓子があるようだ。中に入ってみると、入ったすぐの所に石炭ストーブが置いてあった。ガラスケースの中には、一見してインスタントーラーメンとわかるものがある。袋には紅焼牛肉面とある。価格は2元と安い、カボチャの種は無いか?と訪ねると答えは「メイヨウ」.. ”ありません”という意味。代わりに茶色の紙袋に入った物を見せてくれた。香瓜子と書いてある。何かの種には間違いないが、なんだろうと見てみたら、ひまわりの絵が描いてあった。うまそうなので買ってみた。袋にはISO 9002取得と誇らしげに印刷されている。たいしたものだ!

 そのうち、そのおばさんが我々のことを訪ねる「日本人か?」そうだと答えると、なにやら古びたノートを出してきた。開いた頁を見ると、奈良県の住所が書いてあった。どうも意味が解らなくて、私の住所や名前を書けとでも言うのかと思って、“ダー、ヘー、ティエン”と言いながら、私の名前を書いた。そうしたら、そういう意味ではなく、なんでも、そのおばさんの娘さんが日本にいるらしい。私も”吉林省から来ている在日中国人の友達がいる”と話すと、嬉しそうに「私も吉林省の出身」だと語る。で、娘さんに写真を送るから撮影させてくれと頼んだら、最初は、はにかんでいたが、快く応じてくれた。まあ失礼ながら、一般の観光客(日本人団体観光客)などは、滅多に来ないだろうから珍しかったのかもしれない。お店の住所を封筒に書いてもらおうと思ったが、バスの出発時刻が迫って伺うごとができなかった。帰り際にマシュマロみたいなお菓子をいただいた(娘さんに写真を送るという約束は、帰国後ちゃんと、果たした)

はにかみながらカメラに収まってくれたおばさん

バスはいよいよ長城近くの駐車場に到着。ここから、長城の麓までは徒歩で行く。石造りの門をくぐるとそこは長城の入口、一時間の自由時間をもらって銘々に長城の上を散策に出かける。下から見上げると、遠くの山の方まで、遙か彼方まで延々と続いている。階段や、斜面は思っていたより遙かに急だ、雨の日や凍結していたらとても登れないだろう。中国人の観光客もたくさん来ている。さすがに万里の長城。途中で、2人で来ているらしい若い女性や若夫婦に声をかけて互いに写真を撮ってあげたり、撮ってもらったりした。記念写真用の白馬や駱駝を何頭も見かけた。いったい、幾ら位なのかなあ?長城は歩いても、歩いてもキリがない。そりゃそうだ、なにしろ6000キロもあるのだから...あっという間に45分も過ぎてしまった。急ぎ足で転げるようにバスまで駆け戻る。長城は、想像していたよりも遙かに長大で、堅固な構築物だった。数千年も前にこんなものを作ってしまった中国人(始皇帝)のなんとも壮大な構想に呆れ果てるばかりだ。人類史上もっとも大きな構築物であると共に、もっとも馬鹿馬鹿しい構築物だと思う。そして、それを実際に作ってしまう中国人(労働者)の過酷な労働は如何なる物であったのかと、感慨深い。長城からの帰り道、高速道路に入る前の一般道路は、照明らしい物は皆無だ。多分、新月の夜などは真の暗闇になることだろう。ガードレールの一つもない。その代わりに、道の両側に植えてある立木の下の方、約2m程が白い塗料で塗られている、ヘッドライトの灯りに浮かび上がって、路肩がよく見えるようにしてあるようだ。

長城観光を終えると、再び土産物屋... まあ、格安ツアーには付き物だから仕方がないだろう... その後は、昼食。中華の昼食には例の二鍋頭酒が各テーブル2本付いていた。息子はあまり食が進まないようで、あまり食べてくれない。水餃子が出てきたら1つ食べてくれたので、餃子を2皿もおかわりした。白菜や青梗菜も美味しい

 明の13陵(皇帝のお墓)

文字通り13人の皇帝のお墓がある。ここでは無いので。時間が無いので一番大きい長陵はまだ発掘されておらず見学できない。13代皇帝の定陵を見学する。棺の納められていた地下の安置室など、巨大な地下宮殿を見学した。エジプトのピラミッドの様に内部の宝物を盗まれないように様々な、工夫がされていた。観光地なので土産や飲み物などは非常に高い。

 

北京市内に戻る前に、中国ではかなり有名だと言われる漢方薬の専門店へ立ち寄る。一行は、教室のような所へ通され、白衣を着た”大先生”の講義を受ける。私たち(親子)は知らぬふりを決めて、一番後ろで居眠り...そのうち説明が終わったようで、個々の相談を受けるという。何人かが退室してしまったので、息子のトイレを口実に早々に外へ出る。ここへやってくるバスの観光客目当てなのだろう、敷地の外に粗末なテーブルを並べただけの商売をしている人たちがいた。どんな物を売っているのか興味津々で見に行った。売っている物は、山査子の干物、何か解らない果物の干物、ひまわりやカボチャの種等々。ひまわりの種を試食させてもらったが、油っこくてあまり旨くはなかった。残念ながら買って上げられる物は何もない。

 北京市内に戻ると、まだ夕方5時だというのに、もう夕食だ。天安門広場の近くの大きな建物の4階だ。天安門広場の国旗掲揚塔の周辺には、国旗を降ろすところを見物しようと、大勢の人だかりが出来ていた。時間が無いので建物に入る。エレベーターホールからレストランまでの間が土産物屋になっている。レストラン入口では、まだ準備ができていないと言われ、20分ほど待たされる。つまり、その間にお土産を買えというわけだろう。カラフルな中国凧が目に付いた。今まで見たことがないような、大きな物もあるが非常に高い。以前、大連で買ったような150元位の物が400元以上もする。一番大きな蝶々の凧は、1000元以上(16000円)もする。ここは見るだけだ。部屋の中程には実演即売をしているコーナーがあった。中国伝統の微彫(非常に小さい文字を書く技術)だ。大きさが僅か幅7〜8ミリ長さ15ミリ程度の薄い象牙の板に般若心経全文が彫られている。凄い技術だ。その隣のコーナーでは瓶の内側に絵を描いている女性がいた。その場で好きな絵柄の瓶の余白に購入者の名前を書いてくれるそうだ。

 やがて、テーブルの準備が出来たとのことでテーブルへ着く。今日の料理は有名な北京ダック。メインディッシュのダックがでて来る前に色々な前菜がでてくる。どれも美味しい。半ば、お腹がいっぱいになった頃にダックが出てきた。北京ダックは初めての息子に、ダックとネギ、キュウリ、味噌を挟んで食べさせる。結構、気に入ったみたいだ。私も食べてみる。味噌も美味しくて、今まで食べたダックの内では一番旨かったなあ...だけど、量が、ちょっと物足りなかったのは残念。テーブルの横にはモニターテレビが置かれ、この2日間ずっと、つきまとっていたカメラマンが撮影したビデオ映像が流されていた。聞けば、2日分で8000円だとか... う〜む、しめて3000円位なら買っても良かったけど... 同じテーブルにいた年輩のご婦人が6000円に値切って買ったようだ。ビデオ撮りしていた若い女性カメラマンが涙を流しながら喜んでいた。あの人が買わなければ、2日間の仕事がパー!だもんなあ.... まあ、現地の平均給与などを考えれば6000円だって大変な金額だろうし。レストランの玄関には、壮大な大きさの硯が展示してあった。大きさは、そう、ベッド位の大きさかなあ...いったい、こんなもの実用に使うのだろうか?

 外へ出てみると、もう、7時すっかり暗くなっている。ここから、各自自由行動可となる。やや懐が物足りなかったのでガイドに頼んで5000円ほど両替してもらう。旅行中にしたしくなった若夫婦と一緒にライトアップが美しい天安門へ行ってみる。昼間の光景とは違ってとても綺麗だ。中国人は、なかなかライトアップのセンスがいい。若夫婦にシャッターを押してもらって、別れる。我々は北京飯店の方へ向かう。昨日も行った王府井大街の方だ。途中で細い横道に入ってみる。50mも入ると表通りの喧噪が、嘘みたいに静かで真っ暗だ。帰り路を急ぐ現地の人たちが、僅かに歩いているだけだ。100mおきぐらいに小さな店があって、そこから漏れる灯りだけが頼りだ。日本でもおなじみの床屋のねじりんぼうの看板がある。こんなに暗いのにまだ営業している。瀬戸物売っている小さな店、パンやお菓子を売る店。ここで、黄色い包装紙に包まれたパン(ミルクパン)と袋菓子を買った。その先は、もう真っ暗で店も見えなかったので引き返し、途中でさらに左の小路へと入る。方向的には王府井へ向かうはずだ。もう、ほとんどボールも見えない暗さだというのに、公園で子供達がバスケットボールをしていた。一軒の小さな店があった、道路にリンゴや梨を並べている。眺めていたら、中から中年のおばさんが出てきた。色々話しを聞いて梨を買う。店の中も見せてもらうことにして入ってみると、いろいろ面白そうな物を売っている、それぞれ値段を聞いて乾燥した梅(つまりは梅干しか...)真空パックの肉らしき物があるがなんの肉かわからない。しかし、おばさんが、盛んに「旨い、旨い」というので試しに買ってきた(6元)

中国人はライトアップが実に上手だ

 ここから王府井はもうすぐだ。王府井の入口にある東方広場(百貨店ビル)へ入ってみる。地下に食料品売り場があるだろう。予想通り、北京華国超市(国の字にはさんずいが付く)というスーパーがあった。店内は非常に清潔で、売っている物も日本と変わらない。大連や瀋陽のスーパーみたいな豚足や鼈(生の)等は無かった。果物のコーナーにはドリアンがあった。さすがに高く、日本円で3000円位。あちこち探し回って結局、購入した物は、お土産用の長城ワイン2本、山査子のお菓子44個(すべて買い占めた)白いカボチャの種2袋。しめて119元。荷物が増えたので予め用意のバッグに詰め込む。息子が「疲れたのでもうホテルへ帰りたい」という。“元“がかなり余ってしまうので、最後にタクシー代と明日の飲み物代程度を残して、ジャスミンティーを買った。お茶は軽くて嵩張らない上に、少量でも結構高いので、こういう場合は非常に手軽だ。最近は家でも、ちょいちょいジャスミンティーを飲んでいるのでいいお土産ができた。

通りでタクシーを拾う。昨日の運転手よりも、やや年輩だ。ホテルの名前を告げてもわからない。道路名を言ってもわからないみたいだ。どうも私の発音がいまいちなのか?昨夜はわかったのに... しかたなくホテルのカードを出す。まあ、なんとかわかってくれたみたいだ。ホテルまでは20分ほどかかるはずだ。車は宣武門内大街を南下し、右へ曲がる。そのあたりから運転手の様子がおかしくなってきた。しきりにあたりを見回している。なにやらしゃべりかけてくるのだが聞き取れない。私が「医科大学の所だ」と話す。大学の看板が見えてきた辺りで運転手が「ここを右だったよねえ」と確認するように話しかけてくる。私が「トイ」(イエスの意)と言うと、安心したように右折した。どうやら南菜園路を知らなかったみたいだ。

直前を走っていたタクシーが同じホテルの前に停車した。ガイドと同行のツアーのおばさん達だった。「あら、今、お帰りですか」我々の大きな荷物を見て言う。「はい、お土産いっぱい買ってきました」と私。

 

明日はいよいよ帰国だ。部屋へ帰って荷物をまとめる。大きめのトランクを持ってきていたので大正解。壊れ物の凧と、ワインだけだけ、機内持ち込み荷物にして、残りはすべてトランクの片側のスペースに収まった。明朝受け取ることになっているお土産も残りのスペースに十分はいるだろう。息子は先ほど食べ残した雀の丸焼きや、山羊を食べている。我が息子ながら、なんともたくましい。これならどこへ連れて行っても食べ物には困らないだろう。先ほど買ってきた梨を食べ、コーラで喉を潤す。風呂上がりに、昼のレストランから持ってきた、二鍋頭酒を飲み干して11時に就寝


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目次

1

成田〜北京

2

北京・故宮

3

万里の長城

4

北京〜大連〜成田