第三回中国旅行

四日目

 K氏は会社へ出勤。夫人は大学へ行く。午後からK夫人と合流して昼食へ行くことになった。それまではそれぞれ、自由に行動することになる。朝食の前に中山公園へ散策に出かける。

 朝食は博愛のレストラン。食券を提示して、和食、サンドイッチなどから選択できる様になっている。出勤前の住人がネクタイ姿で食事をしていた。朝食を済ませ、4人でカルフールへ行くことになった。カルフールまでは歩いても5分くらい。1階は家電品や日用雑貨の売り場になっている。入り口を入るときに高価な物を持っていたり、他店で購入した物品が有る場合はチェックされて、備え付けのビニール袋に入れられ、口を熱でしっかり閉じられてしまう。万引き防止のためだ。私は以前にも来たことがあるのでさほど見るところもなかったが、初日に思いがけずシャワーを使えたので下着が一枚足りなくなっていた。手頃なパンツを一枚購入、なんと7元!3人はまだ、見たいようなので、一旦レジの外へ出てみたらテナントのお茶の店が目に付いた。北京にもあった天福名茶店だ。覗いていると店員に声をかけられる。“見ているだけだよ”と言って、しばらく物色していたのだが、ジャスミンティーの新茶があったので、自家用に少し買う。棚の所には以前インターネット通販で購入したことのある小沱茶があった。小沱茶はプーアール茶の一種だが半球状に丸く固めてある。まあ、土産と思って、これも100gほど買う。それから苦汀茶という茶葉を針のように細長く固めた茶があったので、これも購入した。これは日本ではなかなか買えない。茶葉たったの一本を急須に入れれば、朝から夜まで何杯も飲めるという珍しい茶である。もっとも一杯目はかなり苦いけど...。そうこうしている内に、思いがけず時間がたってしまった。S嬢とU氏を探しに行く。T氏はもうしばらく一人でカルフールの中を見ていたいというので3人で別な所へ行くことにした。出口近くにある例のお茶店のところで私がお茶を買ったという話をしたら、二人とも覗いてみたいという。お二人、それぞれお土産のお茶を少し買う。荷物を一旦、部屋へ置きに戻り、バスで大連の駅へ向かう。お目当ての場所は新華書店という本屋だ。大連駅から中山広場の方へ歩いていく。とりあえずは二人を大連観光では大抵コースに入っている旧大和ホテルへ連れて行く。何枚か写真を撮った後、新華書店へ向かった。噂に聞く新華書店は全館書籍関係の売り場しかない巨大な本屋だ。目指す“地図売り場”を尋ねると“4階”にあるそうだ。いそいそと4階を目指す。あるある、うずたかく積まれた地図の中に中国全土の地図(もちろん中国語版)が何種類かあった。手頃な大きさのものを10枚ほど購入する。このフロアーには地図の他に幼児向けの童話や学習参考書などが売られていた。話題のハリーポッターシリーズなどもあった。その他童話や、日本の漫画“ドラエモン”等馴染みの物もたくさんあった。

 新華書店を後にし、二人を友誼商城へ連れて行く。ここは外国人向けの百貨店みたいなところで、輸入物のブランド品等がたくさんある。しかし、二人とも“中国のお土産”とはイメージが違うとのことでさっと眺めただけで外に出る。そろそろ約束の時刻になるので帰ることになった。S嬢はとてもじゃないけど、“あのバス”には乗りたくないとのことで、タクシーを拾って帰った。

 K夫人の案内で昼食にでる。場所は“博愛”の近くの回族料理の店。行ってみると、なるほど普通の食堂ノ通りに面したところではカウンターがあり、テイクアウトも出来るようになっている。中へ入ると地元の人がなにやら“超”大盛りの麺を食べている。美味そうだ。早速我々も注文するがどんな料理なのかさっぱり解らない。私はK夫人のお薦めもあって“激辛”の快削麺というのを頼んでみた。出てきた物はなんと洗面器になりそうなくらいに大きな皿にたっぷり盛りつけられたうどんの様な麺、それに日本なら3人前ほども有りそうな肉と野菜の炒め物だ。この麺に肉、野菜を混ぜて食べるのだそうだ。見ただけでうんざりしそうな大量の麺と具の山に驚きながら、具を麺に載せてかき混ぜる。例によって箸を丁寧に拭いてから一口食べてみる。美味い!麺の微妙な腰の強さと、甘さが辛口の具と絶妙なコントラストを保ち、いくら食べても飽きがこない。そのうちに白っぽいスープが大きなどんぶりでやってきた。麺を食べているうちに飽きが来たらスープを加えてラーメンのように食べるのだそうだ。半分ほどになったところでスープを加えてみる。なるほど、辛口の具がスープで薄まって口当たりが良い。一回で2つの味わいが得られると言う寸法だ。食べきれるかな?と思った大量の麺もかなり食べてしまった。しかし、さすがに全部は食べきれない。ここらへんが日本人の感覚だと“残すのは申し訳ない”ってなってしまうのだろうが、ここは中国、食べきれないものは遠慮なく残す。

 食事の後、皆で連れ立って、馬(マー)さんの店へ行く。ここはチャイナドレスなどのオーダーメードの店だ。S嬢はさっそく、黒のチャイナドレスを試着してルンルン気分。Uさんも奥様へのお土産にと、いろいろ柄や色など悩んでいる。なかなか素敵だ。家内に買っていってあげたいなあと思ったが、寸法がかなり微妙のようだ。本人がいないので採寸するわけにもいかないし、だぶだぶのチャイナドレスなんてみっともなくて着られないだろう。しばらく時間がかかりそうなので、私はTさんと付近の散策に出た。馬さんの店から坂を下っていくと大きな通りにぶつかった。その向こう側には、市場のような所がある。さっそく行ってみる。あるある、ここは地元の人が食材を買いに来るマーケットの様だ。見慣れた野菜や魚介類が所狭しと並べられ、市場特有の活気に満ちている。市場の通り界隈はお世辞にも綺麗な所とは言えず、生臭いにおいも立ちこめ、Tさんは苦手らしい。おおきな籠に入れられた果物類がいくつも並べられ、売り子の女性が何人も籠のうしろに座り込んでいる。一人当たり4つか5つ位の籠がその人の割り当てになっているらしく、頼むと係りの人が目方を量ってくれる。魚介類は一応発泡スチロールの箱に入れられているのだが氷などは入っていない。エビや貝類が目立つ、しかし、一緒に入っている水は海水なのだろうが、まるでみそ汁のように濁った汚い水だ。とても生で食べる気にはなれないシロモノだ。まあ、中国じゃあ、生では食べないから良いのかも知れないけど、かなり鮮度は悪そうだ。中華料理でおなじみの皮蛋(ピータン)等も売っている。しかもカルフールで見た物と違って、ちゃんと土と籾殻までついた本格的な物だ。豆腐が手に入れば、是非買っていって食べてみたいものだがノ.だけど、豆腐には水が付き物だし、熱を通さずに食べるのはかなり勇気がいるなあ。市場の通りを通り過ぎると少し広い交差点に出た

 なにやら数人の男達が大声で怒鳴っている。見ると、交通事故があったようで、それぞれの車の運転手が互いに“お前が悪い!”のような事を言っている。あたりは騒然として二人のやりとりを見ているばかりだ。そこへ公安(警察)の車がやってきた。現場検証でもしに来たのかと思って見ていたら、喧嘩している男達の方をちらっと見ただけで、そのまま通り過ぎてしまった。みていてもしょうがないのでそのまま先へ進む。しかし、あまり面白そうな所も無い。ちょっと興味津々の店もあったが、窓にもカーテンがかかり、入り口も中が見えないようになっていて胡散臭い。ここはすごすごと通り過ぎ、もと来た方へ引き返すことにした。

 T氏は例の市場の通りは通りたくないというので、そのまま別れて、私は市場へと向かう。ついでに売り子を冷やかす、いろいろ話をするうちに赤ん坊の頭よりも大きいぐらいの黄色い“瓜”のようなものを買った。市場の中にスーパーの様な店があったので入ってみた。中は生鮮食品以外のお茶、酒、煙草、スナック、その他の生活物資が売られていた。酒のコーナーには以前、日本で飲んだことにある中国酒が売られていた。日本で入手できるのは陶器の瓶に入っていて結構な値段で売られているが、こちらでは普通のガラス瓶だ。さすがに日本で買うよりも遙かに安いので1本購入。古井貢酒という酒だ。臭いけど実に美味しい。また、店内の隅の方にはお茶の売り場があった。さすがに庶民の来る店だけ会って単価の低い商品が多い。売り子の女の子に話を聞きながら、“メィ・グィ・フォア”という花のお茶を買った。

 荷物も増えたので、馬さんの店へ戻ってみると、なにやら、生地の気に入った物がないので生地の専門店へ物色に行くような話になっていた。一旦博愛へ戻る。生地を見た後、中山公園の近くにあるという骨董品街へ行くことになった。私は一人で散策に出た。中山公園に中をさんざん歩き回ってから、もうそろそろ来ているかなあ?と骨董街の方へ向かった。入り口の階段の所にはたいそうな門があった。そこに20代前半くらいの若い女性が何やら重そうな紙の束の入った袋を両手に持ってやってきて階段を登り始めた。よほど重いのだろう、途中で手を替えながら休み休み登っていく。私が見かねて声をかけ、一方の荷物を階段の上まで運んであげた。非常に喜んでくれた。“骨董街はどこですか?”と尋ねると指さして教えてくれた。目指す、骨董街にはほとんど人気もなく、なんとなく胡散臭い。裏路地の様な曲がりくねった通路の両側に古風な建物が並んでいる。店の中には人がいるようだが、前を通りかかってもかけ声一つかからない。もっとも、こんな所に入ったら何を買わされるかわからない。ぐるりと一回りしてしまったがKさん達には遭遇しなかった。出口の付近にお店で“日本人の4人連れを見かけなかった”と尋ねると、しばらく前に私と逆回りに通ったらしい。少し歩き疲れたので博愛へ戻って休むことにした。

 途中の通りで小さな書店らしき物を発見した。早速入ってみる、どうやら学生相手の参考書などを扱っている店らしい。物色していたら、“新日本語”という日本語の教科書(中国人が日本語を勉強するための)を見つけた。中国語を勉強している私には非常に興味深い、“やや嵩張るなあ”とおもいつつも買って帰ることにした。そこへ、運送屋がなにやら大きな荷物を二つほど配送してきた。店の主人らしき人が“@#$!&*”と私に声をかけてきた。てっきり“邪魔だからちょっとどいて”と言われた物と思い、脇に避けていたら、一個をずるずると引きずって奥の方へ運んだ。再び“@#^#%”と声をかけられ、はっと気づいた。彼は“重いからちょっと手伝ってよ”と言っていたのだ。で、荷物運びのお手伝いをした。運び終わっても別に“謝謝”の挨拶一つもない。まるで当たり前みたいな顔をして奥へ行ってしまった。なにはともあれ、件の本を購入して博愛へ戻る。先ほど買ってきた果物を冷蔵庫で冷やした。帰国に備えて荷物を整理しながらテレビを観る。しばらくすると、電話があり、K氏の中国語の先生が見えたので一緒に少し中国語を勉強しないかというお誘いだった。T氏は“じゃ、俺行って来るよ”といそいそと出かけた。私は日本でも習っていることなので、部屋で休んでいることにした。

 やがて、再び電話が鳴り、中国語の勉強会が終わったので食事に行きましょうとのお誘いだった。しかし、私はさほど食欲もなかったので一人で残ることにした。午後7時頃になって、いくらか日も暮れてきた頃先ほどの市場で、別な酒でも買おうかなと思って、出かけていった。しかし、さすがに時間的にもう市場は終わっていてスーパーは閉まっていた。市場の方もほとんどあとかたづけがおわり、殆どの人が帰り支度をしていた。道路には、その日売れ残ったと思われる野菜や果物がごっそりと捨ててあった。どうやらそのまま捨てていってしまうらしい、いったい誰が掃除をするのだろうか?薄暗くなった通りの真ん中で小さなイスに腰掛けた男が、ミカン箱くらいの箱の上に発泡スチロールの皿をたった一枚置いて足下に置いてあるウニの殻を割って、スプーンで丁寧にミソを取り出しさらに並べていた。あれ、いったいどうするのだろうか?やはり売り物なのだろうか?それにしても、足下にあるウニの数はせいぜい10数個、全部ミソをとりだしたってあの皿一杯にはなるような量じゃない。でも自分で食べるなら、あんなに丁寧に皿に並べる必要もないだろうし ノ。不思議な光景だった。

 市場で目的の酒が買えなかったので引き返してカルフールへ向かった。さすがにこちらは繁華街。通りは暗いがカルフールの前あたりは大勢の人でごった返している。付近には小さな屋台が何軒もでている。売っているのは殆どがイカだ。さほど大きくもない鉄板の上で脚がついたままのイカをそのまま焼いて売っている。香ばしいにおいが漂い、さも美味そうだ。カルフールでは朝に購入したパンツが意外とはきやすかったので、同じ物をさらに2枚買った。外へ出ようと思ったら、出口がしまっている。閉店時間が近づくと入り口が閉鎖され、いやでも地下の食料品売り場を通らなければ出られないようになっているのだ。地下も昼間ほどの混雑ではなかったが、大勢の人がレジに並んでいる。酒の売り場には色々な酒が並んでいるが、日本で買える物を買っても仕方がない。初めてみる          ***酒を買う。さきほどはゆっくり見られなかった肉などの売り場へ行ってみた。あるある、豚足や耳、鼻などが形のままで売られている。ちょうどいい、博愛の部屋には電子レンジもあることだし、今夜はこれで夕食を済まそう。豚足と豚鼻の手頃な大きさの物を袋に入れてもらう。果物のコーナーには火龍果(ドラゴンフルーツ)があった。“火龍果”というネーミングもなるほど、面白い。結局ドラゴンフルーツをマンゴー、小振りのカップ麺を購入して帰る。博愛には、まだ誰も戻っていなかった。果物 を切ろうと思ったが残念なことにナイフも包丁もない。一階のスーパーへ行き、レジの女の子に“ナイフを貸して欲しい”と言ったところ、一瞬戸惑って、奥の方から小型の包丁を持ってきてくれた。どうやら、店に置いてある物ではなく私物だったらしい。“明朝返すから”と話して、持っていこうとしたら、エレベーターの所まで追いかけてきた。“貴方のお名前は?”。そりゃ、もっともだなあ..

 部屋番号と名前をつげて、部屋へ戻る。早速、豚足を電子レンジで温め、昼間買ってきた瓜を切る。さすがに200Vの電子レンジ、日本の感覚で時間を設定したら少し加熱しすぎてしまった。味はノ う〜む、やや塩味が強すぎる。自分で味付けした豚足の方が美味い。豚の鼻も食味は足とほぼ同じ、例の黄色い瓜は確かに瓜なのだが、甘みは少ない。Kさんから頂いていたビールを飲む。マンゴーは日本のマンゴーと変わりないなノ。だけど、ドラゴンフルーツは甘みも少なく、期待はずれ。豚足を肴に、昨夜飲み残した白酒をちびりちびりと飲む。度数が強いのでいきなり酔いが回ってしまう。どうせ、みんなが帰ってきても、お腹一杯で果物なんか残して置いても食べられないだろう。食べきれなかった果物類を袋に入れて包丁を返しに行き、貸してくれた女の子に差し入れしてあげた。


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 目次

1

大連〜北京

2

北京

3

北京〜大連

4

大連

5

大連