4. 3月15日 サハラ砂漠とマトマタ 

 この日は朝からオプショナルツアー組と自由行動組に分かれる。オプショナルツアー組はチャーターした四輪駆動車で、8時にホテル前を出発する。我々は、もちろん自由行動。ホテル近くのメディナへ向かう。かねてから下調べしておいた博物館を目指す。ガイドブック片手にメディナの方へ向かったが、入り口を見過ごして、通りの突き当たりまで行き過ぎてしまった。地図で見た感覚よりも土地が狭いせいだ。戻るのも面倒なので、そのまま右折し、しばらく行ったところを見当をつけてメディナの方へ向かう。

 やがて、予想通りイブン・シャハッド通りへ出た。通りに面したお店のご主人に、博物館の場所を尋ねる。小さな横通りになっている博物館への通りをみつけ入ってみる。残念ながら、今日は休館のようだ。壁の日干し煉瓦の幾何学模様が美しい。さほど大きなメディナではないので、すぐにメインストリートへ出てしまう。市場があったので覗いてみると、アーティチョークが山のように積まれていた。どこからやってくるのか魚屋もあり、肉屋ではラクダの頭が生のまま壁にぶら下げられていた。首の断面からは生々しい血が流れている。八百屋で小振りの洋梨を購入。広場にいた土産物売りの少年からディツ(ナツメヤシの実)を購入、1.5 D。

 2時間のフリータイムはあっという間に過ぎて、ホテル前へ戻る。そのままバスで、4輪駆動ツアー組との合流地点へ向かう。合流地点は大きな交差点。待っている間に付近の散策に出る。兄弟なのか三人の子供たちが通りで遊んでいる。昨夜、一緒にお酒を飲んだAさんがなにやら、警官に職務質問をされているようだ。小型の望遠鏡で砂漠の方を見ていただけなのに...やがて、到着した4輪駆動ツアー組一行は、車に乗っていただけなのに、ちょっと埃っぽそう。

博物館は休みでがっかり

子供はやはり可愛い

職務質問中!

これはバス停留所

 ドゥーズへ向かう。さっそく、先ほど買った梨の皮を剥いて食べてみる。うん、確かに洋梨だ、同行の面々に少しずつお裾分けする。ドウーズという地名はフランス語の12(ダース)の意で、昔ここに駐留していたフランス軍にちなむ物だそうだ。

途中で、広大な塩湖ショット・エル・ジョリドを横断する。360度の地平線だ。その真ん中を、まっすぐにただ一本の道が延びている。道路は塩湖の表面から数メートルほど塩を盛り上げてある。湖と言っても大部分は干上がって、ただの塩の砂漠だ。工事のために塩を掘り起こしたところは浅い川のようになって、青緑色の流れ(いや、水たまり)になっている。途中に、砂漠のバラなどを売っている土産物屋の集落がある。さして珍しい物でもないが、一応記念に、日本から持参したお菓子と何個かのバラを物々交換してもらった。それにしても広い!地平線の果てまでずっと塩の大地が続いている。まさしく360度の地平線。用意してきた袋に少量の岩塩を採取して記念に持ち帰る。その後、バスは砂漠の砂に埋もれそうな道路をさらにすすみドウーズへ到着。ここで昼食を摂った後、サハラ砂漠へのラクダツアーに出かけた。

塩の砂漠・360度の地平線

これがサハラ砂漠だぁっ!

 ここでは、観光用に民族衣装の貸し出しをしているとかで、希望者はそれっぽい衣装を借りる。ラクダ乗り場には、一行43名が乗れるだけのラクダがちゃんと待機していた。ラクダに乗るのは初めてだ。ラクダの腰の辺りに座布団のようなものが据えられ、木を組み合わせたフレームがその前に縛り付けてある。アフリカのフタコブラクダは、あんな風に見えても意外と気性が荒いそうで、迂闊につきあうと大変なことになるとか...。実際、日本からの観光客が、振り落とされて、打ち所が悪く、亡くなった方までいるそうだ。一同、思い思いに気に入ったラクダにまたがると、いきなり後足から立ち上がる。すかさす前足を伸ばすので、乗客はいきなり前後に揺すぶられて“ああっ”とか“おおっ”と思わず声が出る。しっかりつかまっていないと、本当に振り落とされてしまうだろう。一行は砂漠を行くキャラバンの様に、数グループに分かれて砂漠へ分け入っていく。なんとも異様な風体の集団だ。サハラの砂は思っていたよりも、遙かに粒子が細かくてさらさらしている。風が来る、細かい砂が容赦なく一行を襲う。目と言わず鼻と言わず、耳の穴にも砂が入ってくる。この程度の風でも全身砂まみれだ。

ラクダの背から写真を撮るのは命がけ!

 本当の砂嵐なんかだったら、いったいどうなっちゃうのだろうか?想像を絶する。ところでラクダの乗り心地?お世辞にもいいとは言えない。以前、インドで乗った、象ほどは揺れないけれど、大股開きで跨り、鐙もないラクダの騎乗は体験するだけで十分だ。こんなので一日砂漠を歩いたら尻が保たないなあ...。砂漠の民ベドウィンはラクダの上で生まれてラクダの上で死ぬというが、やっぱり“慣れ”なのだろう。ラクダの手綱を曳いている男が、いきなりしゃがみ込んで、サハラの砂を手ですくって前のラクダに乗っている人に渡している。さらに2番目の人にも...こんな事もあろうかと、私はデジタルカメラしか持ってきていないのに、わざわざフイルムのケースを持参してきていた。“ムッシュー”と声をかけて私の分は、フイルムケースに入れてもらった。それを見ていたのだろう。後ろの集団でも“フイルムケース、フイルムケース”と騒いでいた。ラクダツアーの終点(出発した所)では、なにやら人だかりがしている。我々がラクダに乗っている姿と写真に撮って、それを販売しているのだ。なかなか商魂たくましい。観光地化してしまっている証拠とも言える。私は、自分がラクダに乗った見苦しい姿なんか見たくもなかったので買わなかった。

 今夜の宿、マトマタの町へ、あと10キロほど、というところにあるタメズレットのカフェでトイレ休憩をする。この町は山の頂上にあり、非常に見晴らしが良い。ベルベル人が作った町で、どうしてこんな辺鄙なところにと思わせる、荒野のど真ん中だ。外敵から逃れるために、こんな不便な所に町を作ったのだそうだ。トイレチップ代わりの、一杯1Dのミントティを飲んだ。甘くて美味しい。息子への土産にサソリの標本を購入。

タメズレットの町

 タメズレットからマトマタへは結構な下り。周囲は地平線の彼方まで、でこぼこの荒れ地。やがて遠くに一軒の大きな建物が見えた。あれが今夜の宿らしい。ホテルの周辺にはホテルの建物以外には何もない!どうしてこんな所にホテルがあるのだろうか?その方が不思議なくらいだ。ホテルの前の道路を挟んだ向かい側に、小高い丘があったのでちょっと登ってみる。なるほど、地平線の彼方までの間には、ほんの数えるほどの住宅らしき白い建物が何軒か建っている。ここマトマタは、映画スターウオーズのロケ地として有名だが、荒れ果てた地形以外に見るべき物はほとんどない。3つ星のホテルでもドルの両替が出来ない。宿泊したカスル・エル・アマジクホテルは、山の地形をうまく利用して建てられており、受付、レストランを兼ねる建物と客室群は別棟になっている。客室へは廊下もなく、表の遊歩道のような通路を歩いて、ドアを開けたところが、直接客室になっている。僻地と言うことで、バスの湯は出ないと脅されていたが、部屋によって出るところ出ないところがあったようだ。いずれにしても、私の部屋のバスは栓がゆるゆるで、何の役にも立たない。今日はサハラ砂漠のラクダツアーで皆さん、埃まみれ。みんな風呂へ入りたいだろうなあ 。

 私は風呂代わりとばかりに、ホテルのプールへ入ってみる。冷た〜い!とてもじゃないが、全身浸れる水温じゃない。見ていたMさんが、“ちょっと向こう側まで、さっと泳いできたら..”ってけしかけるけど、心臓麻痺を起こしそうだ。早々に上がって、プールサイドの冷たいシャワーを浴びて砂埃を落とす、実に爽快!今夜の風呂は、これでお仕舞い!ホテルの屋根の上にはソーラーシステムがあって、ここで湯を沸かしているようだ。なるほど、これでは大勢が一度に来れば、湯もたりなくなるだろう。いずれにしても、ここのホテルは通常の観光日程では通過してしまい、その前後の町のホテルを利用しているとのことで、滅多に泊まれないレアなホテルだそうだ。バスのガイドや運転手まで、ここのホテルに泊まるのは初めてだそうだ。

荒野のど真ん中のカスル・エル・アマジクホテル

プールは水が冷たくてちょっと入っただけ...

 部屋は任意に割り当てられるが、どんな部屋になるかは運次第。私の部屋は、なんと3ベッドの広い部屋。しかもちゃんと電話まで付いている。ごくごく質素な部屋で、例によってタオル、石鹸以外は何もない。毛布だけは余分に備え付けられている。やはり夜になると寒いのだろう。興味津々で、あちこちの部屋を見せてもらう。Mさんの部屋は一番奥まったところ。電話はあるけど配線が切れている、というか、裸に剥いた線が適当に捩られているだけで、発信音がしない。壁から出ている線は2本、電話機からの線は4本、定石通り4列の内の中2本を、持参のナイフで被覆を剥いて結線したら、ちゃんと繋がった。見ていたMさんは“えっ?どうして、そんなの見ただけで判るの?”と不思議そう。“うん、判っちゃうんだよね〜”と私。彼女、パソコンのことは詳しくても電話線については、さすがに、ご存じなかったようだ。

シンプルで何も無い部屋

お尻を洗うホース

 日が沈んで暗くなった頃、夕食だ。ホテルのレストランもさほど広くない。今夜は、ツアーの初日に昼食を共にした老夫婦とご一緒になった。ワインは添乗員お奨めのシャトーワイン。だが、味はうすっぺらのごく普通のテーブルワイン。もう少し、コクのあるワインが飲みた〜い。“それじゃあ”と2本目は、先日チェックしてあるMAGON。ところが、こいつがくせ者。ガイドブックにもあったように、昨日のMAGONと同じビンテージなのに、まるで違う。こりゃあ、重い思いをしてまで、日本へもって帰るほどのワインじゃあないなあ...。料理はチュニジア名物“ブリック”と“クスクス料理”ブリックは中に半熟卵の入った大きめの餃子の様な形の物を油で揚げた物。残念ながら、ブリックの中の卵は完熟だった、それでもぱりっと言う感触が美味しい。クスクスは米粒位に細かく作られたパスタで、これに肉や魚に野菜入りのトマトスープ等をかけて食べる。チュニジアばかりではなく、北アフリカ各地で良く見られるそうだ。帰国後、思いがけず、市内の輸入食品を扱う店でフランスの物を見つけた。

 この夜は、旅の疲れもあって熟睡

本日の走行距離 約310キロ

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